本上まなみの映画初主演作品。監督は『がんばっていきまっしょい』の磯崎一路。原作は直木賞作家・山本文緒の同名小説。スーパーでアルバイトする大学生の鉄男(玉木宏)は、時折見かける若い女性・さとる(本上まなみ)に憧れを抱いていた。ある日、さとるが鉄男の前で貧血で倒れたことがきっかけで交際がスタート。丘の上の家で母(藤真理子)、妹(野波麻帆)と暮らすさとるは、内気で物静かな反面、ドライブの最中ホテルに誘い哲男を求めるなど、不安定な感情を持っていた。その原因は、厳格な母親のもとで送る抑圧された生活にあった。TVでは明るいキャラクターの多い本上まなみが、一転して心に闇を秘めた女性に扮し、微妙な心理表現に挑んでいる。ヒッチコックの『サイコ』をイメージさせる、威圧的な母親を藤真理子が演じているが、彼女が哲男の前で女をさらすシーンは、凄まじいばかりの迫力。そんな中、ひとり明るく素直なキャラクターである野波麻帆の妹が、陰々滅々となりがちなムードの作品に明るい光を投げかけており、一種の救いになっている。主題歌は鬼束ちひろの「茨の海」。(斉藤守彦)
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